昔の瓦と今の瓦ではどう違う?学んでおきたい豆知識

昔の瓦と今の瓦ではどう違う?学んでおきたい豆知識

2024/08/30

瓦屋根は日本で古くから使用されている屋根材です。
ただ、昔の瓦と今の瓦では違っている部分もあります。
それは材料の違いであったり、施工方法の違いであったりします。
そこでここでは昔の瓦と今の瓦の違っている点について紹介していきたいと思います。

素材の違いについて

まず昔と今では素材の違いというものがあります。
昔は瓦というと粘土瓦しかありませんでした。
しかし最近ではセメント瓦、コンクリート瓦もあります。
まずはこれらの違いについて紹介していきます。

粘土瓦について

瓦の中でももっとも多く使われている瓦は「粘土瓦」です。
これはその名前の通りに天然の粘土を材料とした瓦で、日本では昔から瓦といえばこの粘土瓦ということとなります。
粘土を瓦の形に作って、その瓦を焼いて完成させていきます。
粘土で形を作って焼いて仕上げることから茶碗や皿などと同様に陶器のようになるため「陶器瓦」と呼ばれることもあります。
この粘土瓦の特徴は「耐久性が非常に高い」「耐用年数がとにかく長い」ということです。
耐用年数の長さに関してはこの瓦が他の屋根材と比べてももっとも長いものとなっています。
他にも耐熱性、耐火性、防水性、防音性などさまざまな性能が高いというメリットがあるのですが、「とにかく重い」というデメリットがあります。
近年、耐震性能を高める工事を行う際には「屋根の軽量化」が求められており、瓦屋根は重いために金属屋根などに葺き替え工事を行うことも多くなっています。

また、粘土瓦には大きく分けると「釉薬瓦」と「無釉瓦」という2つの種類があります。
それぞれに違った特徴があるので押さえておきましょう。

・釉薬瓦

釉薬瓦は粘土を瓦の形に作って、その表面に釉薬(ガラス質の粉末)をまぶして焼いた瓦のことを指します。
基本的には茶碗などの陶器類と同じ作り方になっているため「陶器瓦」と呼ばれるのはこちらの釉薬瓦ということとなります。
釉薬瓦は表面に釉薬をまぶしていることによって耐久性や耐水性が向上するというメリットがあります。
さらに釉薬を選ぶことで色、艶などの仕上がりを望みどおりに変化させることができるため、幅広く使いやすく、自分好みの瓦にしやすいという特徴もあります。

・無釉瓦

こちらはその名前の通りに釉薬を使わないで焼き上げて仕上げた瓦です。
粘土を瓦の形にしてそのまま素焼きすることとなります。
他の呼び方として「いぶし瓦」「素焼瓦」などと呼ばれることもあります。
その中でもいぶし瓦は焼きあがると落ち着いた雰囲気のある銀色になるのが特徴的です。
高級感があり、落ち着いた色合いになるので古風な家によく合います。

セメント瓦

こちらはセメント、砂、水を混ぜたものを瓦の型に流し込んで形成し、形を作ったものに塗装をして仕上げたものとなります。
もちろん昔の日本にセメントなどありませんので、比較的最近になって使われ始めた瓦だと言えます。
見た目の形は粘土瓦に似てはいますが、性能としてはまったくの別の瓦となっています。
セメント瓦は色や形をある程度自由に作ることができますので、建物の形状や色合いに合わせやすいというメリットがあります。
また、耐熱性や耐火性に優れていることも長所と言えます。
ただ、セメント瓦は塗装仕上げの瓦のために、定期的に瓦の表面に塗装メンテナンスをする必要があります。
表面に塗装をしなければ瓦自体はセメントですので防水性がなく、瓦がひび割れしたり水漏れしやすくなってしまいます。
定期的に塗装メンテナンスが必須になるということ、粘土瓦よりも耐用年数が短くなっているということを押さえておきましょう。

昔の施工方法である土葺き工法について

瓦の素材が昔と今で違うということもありますが、瓦の施工方法も大きく違っています。
そこでまず昔の施工方法として主流だった土葺き工法について紹介していきます。

土葺き工法とはどういった工法なのか

日本では瓦を屋根の上に設置する際には昭和初期ごろまで土葺き工法が主流となっていました。
土葺き工法は「湿式工法」とも呼ばれています。
その具体的な方法としては、まず屋根の上に下地となる野地板を設置していきます。
昭和初期ごろは杉材のバラ板が野地板に使われることが多くありました。
野地板が屋根の上に設置できたらその上に土を敷き詰めていきます。
この土によって瓦屋根を固定するというのが土葺き工法なのです。

土葺き工法にはどういった種類があるのか

土葺き工法には「ベタ葺き」と「筋葺き」という2つの種類があります。
「ベタ葺き」とは瓦の下に設置された野地板に土を全面的に敷き詰めていく方法です。
この工法は下地の調整も兼ねており、瓦を設置しても安定しやすく、断熱効果も高くなるという特徴があります。
ただ、使用する土が多くなる、その分だけ屋根が重くなるというデメリットもあります。

「筋葺き」は屋根の「谷」と呼ばれる部分にだけ土を設置していく工法です。
その土がある部分に瓦を設置していくこととなります。
ベタ葺きよりも使用する土が少なくなるので、屋根の重量が軽くなるという特徴があります。
ただ、土がない部分もできてくるので、不安定さもあります。

土葺き工法のメリットとデメリットとは

土葺き工法では屋根の上に土を大量にのせるため、その重さで瓦がズレるというのを防ぐ効果があります。
また、大量の土によって断熱効果も期待できます。
瓦の安定感という点では高いものがあると言えるでしょう。

デメリットとしては大量の土を屋根の上にのせるために「屋根が重くなる」ということがあります。
この屋根が重くなるというのが建物にとって大きなデメリットとなります。
柱や壁にかかる負担も大きくなりますし、地震には非常に弱いという欠点があることとなってしまいます。

近年土葺き工法は急激に減っている

土葺き工法は昔から日本で使われてきた工法ですが、近年あまり見ることができなくなってきています。
その原因は「屋根が重いため地震に弱い」ということがあります。
特に関東では1923年に関東大震災が起こり、その時に土葺きの屋根が多く落下して被害が出ました。
そのためこれ以降関東では土葺き工法は使われなくなりました。
関西ではそれほど大きな地震がなかったため、土葺き工法が使われ続けてきましたが、1995年の阪神・淡路大震災の時に大きな被害が出て、それ以降急激に減っていきました。
こうして現在では土葺き工法はほとんど見ることができなくなってきています。

▷【2024年最新】京都で使用できる屋根リフォームや耐震化の補助金について

現在の瓦の施工方法とは

昔主流であった土葺き工法は現在では他の工法へと変化してきています。
ここではその変化した現在使用されている工法について紹介していきます。

引掛桟瓦葺き工法について

こちらは現在多く使われている工法です。
棧木を下地に固定し、そこに瓦を引っ掛けて釘を打って固定していきます。
土葺きよりもはるかに屋根が軽くなりますので、構造部分を強化する必要がありません。
土を大量に使わないことで土葺き工法と比べると半分ほどの重さにすることができるというメリットがあります。

ポリフォーム工法について

こちらのポリフォーム工法はポリフォームと呼ばれる接着剤を使って瓦と下地材を固定していく工法です。
もともとはハリケーンなどで被害が多く出ていたアメリカで開発された工法となっており、瓦を落下させないように工夫されている工法となっています。
ただ、日本ではハリケーンのような強風になることはほとんどなく、ある程度の台風くらいでは瓦自体の重さで耐えきれるため、それほど多くは使用されていません。

ガイドライン工法について

こちらは新たに主流となってきた引掛桟瓦葺き工法にさらに新しい基準を設けた工法となっています。
2000年以前の引掛桟瓦葺き工法では瓦4枚につき釘を1本打つ方法で瓦を桟木に固定していましたが、ガイドラインが制定されてからは瓦2枚につき釘1本を打つことが最低基準とされており、さらに瓦1枚に対して釘1本を使う「全数緊結」が推奨されてきています。
また、2022年1月からは、瓦屋根の緊結方法がさらに強化され、強風対策が義務化されてきています。
こうしたガイドラインに従った、もっとも安全な工法だと言えるでしょう。

瓦屋根で問題となるのは耐震性能

昔と今では瓦の「素材」「施工方法」に大きな違いがあります。
基本的には瓦屋根は断熱性が高い、耐用年数が長いというメリットがあるのですが、やはり「土」「瓦」というものによって屋根が非常に重くなるというデメリットがあります。
近年日本各地で頻繁に行われている「耐震工事」は基本的に「屋根を軽くする」という工事です。
地震があった際に屋根が重いと建物の揺れ幅が大きくなり、建物の柱や壁に大きな負担をかけることとなって倒壊しやすくなります。
逆に屋根が軽くなれば振れ幅が小さくなり建物にかかる負担も小さくなります。
そのため最近では重い瓦屋根から軽い金属屋根に葺き替えるという葺き替え工事が多く行われているのです。

どうしても瓦屋根にこだわる場合は防災瓦を

メンテナンス時、耐震補強工事の際に瓦屋根から金属屋根に葺き替えるということが増えている近年ですが、それでもやはり瓦屋根にこだわりたいという人もいます。
そういった場合は「防災瓦」を使うという方法もあります。
防災瓦は一般的な瓦と比べると軽量で防水性に優れた粘土瓦で、台風や地震にも強いという特徴があります。
防災瓦は固定する際にロックアームと呼ばれるツメ部分で瓦と瓦を引っ掛けて固定していきます。
瓦同士がこのツメによって噛みあってロックされることに加えて、桟木に釘で打ち付ける工法となりますので強風の場合でも浮き上がったりズレてしまうということを防ぎます。
また、従来の瓦よりも軽いため、耐震性も向上しています。

まとめ

瓦屋根は日本では古くから使用されてきた屋根材です。
ただ、昔と今では瓦の素材、施工方法が大きく違ってきています。
そういった違いも知った上で、瓦屋根を選んでいくと良いでしょう。