瓦屋根の種類とそれぞれのメンテナンス方法について解説

瓦屋根の種類とそれぞれのメンテナンス方法について解説

2024/08/02

日本では昔から瓦屋根が多く屋根材として使われてきました。
最近ではスレート屋根や金属屋根などが増えてきていますが、日本家屋や寺院仏閣などでは瓦屋根がまだまだ多く使われています。
ただ、この瓦屋根にもさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
そこでここでは瓦屋根の種類や役割、特徴、メンテナンス方法などについて紹介していきたいと思います。

棟瓦とは

瓦屋根にはさまざまな部位、種類の瓦がありますが、その中でも棟瓦が知名度も高く、重要な役割を果たしている瓦でもあります。
ここではそんな棟瓦について紹介していきます。

棟瓦の概要について

屋根には低い位置の「軒」と呼ばれる部分や、屋根材が並ぶ斜めの部分、屋根の頂上部分に水平になっているもっとも高い位置の「棟」と呼ばれている部分などがあります。
この高い位置の棟の部分に設置されているのが棟瓦です。
和瓦を屋根に設置していく際には棟の部分に熨斗瓦を数段積んでいくという「棟積み」が多く利用されています。
この棟積みの一番高い位置に設置する瓦のことは冠瓦と呼ばれています。
特に和瓦を利用して屋根の棟部分で棟積みを行い、そこに棟瓦を設置することによって「屋根内部に水が入りにくくなる」というメリットがあると同時に建物全体に重厚感のある風格や威厳を持たせることができます。

棟瓦の種類について

棟瓦は非常に重要な役割を果たしている瓦ですが、その棟瓦の中にも色々な種類があります。
ここではそれらの棟瓦の種類の中でも特によく使用されるものを紹介していきます。

・冠瓦(江戸冠)

冠瓦は瓦の横幅が5寸(約16cm)ほどで、瓦の上部分には丸まった紐の模様がついている瓦です。
数ある和瓦の中でも、もっともオーソドックスで幅広く普及している棟瓦となっており、棟の高さを高く見せることで屋根全体を高く見せる効果があります。
また、瓦全体が丸みがあるフォルムとなっているため、水はけがよく、雨水をうまく流していくことで屋根の内部に水を侵入させにくい形状と言えます。

・七寸丸冠

七寸丸冠と呼ばれる瓦はその名前の通り横幅が7寸(約23cm)ほどの瓦で洋瓦に多く見られる棟瓦です。
洋瓦では棟積みを行わずに設置していくため、棟瓦で隙間を埋める必要があります。
広い範囲を棟瓦によって埋める必要があるために横幅が広い棟瓦が必要となってくるのです。
そこでこの瓦が利用されています。

・紐付き三角冠

その名前の通りに紐がついた三角の形状をしていることで、棟全体を引き締める効果がある瓦となっています。
こうして棟を引き締める効果によって屋根全体の印象やイメージをスマートで洗練された雰囲気に見せる効果があります。

棟瓦の劣化症状とメンテナンス方法について

 

冠瓦は設置する際に銅線によって固定されています。
ただ、この銅線が経年劣化してくると固定力が弱まってしまい、強風などによって瓦がズレてしまうということがあります。
瓦がズレてしまうとその隙間から雨水が侵入する可能性もありますし、瓦が落下してしまうという危険性もあります。

また、熨斗瓦についてはその間を埋めている漆喰が劣化してくるとやはり瓦がズレてしまうことがあります。
大きく漆喰が劣化してしまうと大規模な補修が必要となってきます。
棟瓦がズレている、漆喰や銅線が劣化している、破損しているという場合には瓦の崩落や雨漏りの可能性も高くなりますし、屋根の美観も大きく低下することとなります。
こういった状態になってくると棟部分を一度解体して整理し、古い瓦や漆喰を撤去した上でそこにまた新しく瓦を積み直していくことで機能を復帰させます。
そうした作業を「棟瓦の積み直し」と言い、棟瓦部分の固定力や耐久性の復帰、美観の向上などを行うことができます。

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「鬼瓦」とは

瓦の中でも一般的によく知られている瓦が「鬼瓦」です。
ただ、鬼瓦はその名前は広く知られているのに対して、その役割はあまり知られていません。
ここでは鬼瓦の果たしている役割について紹介していきます。

鬼瓦の概要について

鬼瓦は伝統的な日本家屋の棟の端に設置されている役瓦を指しています。
つまり鬼瓦は棟瓦の一種なのです。
屋根の頂上部分の水平になっている屋根の中でももっとも高い部分は「棟」と呼ばれるのですが、その棟の端に設置されている瓦が「鬼瓦」なのです。
鬼瓦という名前の通りに「鬼の顔」のような強さや怖さをイメージさせるデザインのものもありますが、すべての鬼瓦がそういった鬼の顔のデザインというわけではありません。
中には「雲」「波」などをかたどったデザインのものも数多くあります。
このように鬼の顔がデザインされていない瓦であっても、棟端に設置されている瓦は鬼瓦と呼ばれています。

鬼瓦の役割は「魔除け」である

鬼瓦がどうやって生まれたかという起源については、古代ヨーロッパのギリシャ神話に出てくるメデューサとされています。
メデューサとはヨーロッパでも恐ろしいもの、恐怖を感じるものの象徴であり、神話ではメデューサをまともに見てしまうと石になってしまうというエピソードがあります。
このように恐ろしいもの、怖いものを家の高い場所に設置することによって「魔除け」「厄除け」になるとされてきたのです。
ヨーロッパではメデューサをかたどった置物を家の入口に設置することで魔除け効果が期待されていますが、日本においては家内安全、無病息災をより強く願うべき場所である棟端に鬼瓦として設置するようになりました。
棟端に日本で昔から怖いものの象徴として扱われている鬼を飾ることで、「怖いもの(鬼)に家を守ってもらう」「怖いものが魔を祓う」ということを願ったのです。
こうして鬼瓦が魔除けとして家に設置されるようになりました。

鬼瓦には雨仕舞いという役割もある

鬼瓦と言えば「魔除け」の役割があるのですが、他にも現実的で実用的な役割も果たしています。
その役割とは「雨仕舞い」と呼ばれるものです。
棟の端部分は角であるために雨風にさらされることが多い部分でもあります。
こうした部分は劣化もしやすく、その部分が劣化すると、そこから雨水が内部に侵入してしまうということがあります。
その棟の端部分を鬼瓦によってカバーする、保護することによって、雨水が内部に侵入することを防ぐということが可能となるのです。
雨水を建物の内部に侵入させず、外部に適切に流していくという役割のことを「雨仕舞い」と言います。
鬼瓦は屋根の上でこの雨仕舞いの役割も果たしているのです。

棟瓦や鬼瓦以外の屋根瓦の名称と役割について

瓦には棟瓦、その中の鬼瓦以外にも多くの屋根瓦があります。
ここではそれらの他の屋根瓦の名称と役割について紹介していきます。

袖瓦(そでがわら)

袖瓦は切妻屋根などの形状の屋根で三角形になっている破風部分に使用するための瓦です。
ケラバに使用する瓦なので「けらば瓦」と呼ばれることもあります。
袖瓦の壁側には雨水を防ぐ、除けるための垂れがあり、屋根の内側部分に水が侵入していくことを防ぐことができます。
また、袖瓦には左右があります。
地上から屋根を見上げた時に右側につくのが右袖であり、左側につくのが左袖となっています。
袖瓦には種類が多く、平袖、紐袖、中付袖、見せ掛け袖などの袖瓦があります。
設置する際には設置する作業が細かく、職人の技術が求められる瓦でもあります。

軒瓦(のきがわら)

軒瓦とは名前の通り、軒先に設置される瓦です。
軒瓦は中央部分が凹んでいる形状をしており、その凹んでいる部分を水が通るようになっています。
この軒瓦が正常に機能することで屋根の上に水が溜まらず、適切に外部に排水することができるようになります。
また、外から屋根を見上げた際にはもっとも見えやすい位置にある瓦ということもあって、高いデザイン性、美観を整えるという意味合いの瓦でもあります。

角瓦 (かどがわら)

角瓦は軒と破風が交差する部位に設置する瓦です。
角瓦の役割としては軒瓦と袖瓦を組み合わせたような役割となっており、瓦が雨樋とぶつからないように先端部分には切れ込みが入っています。
この角瓦にも色々な形状のものがあります。
屋根の形状に合うようにしなければいけませんし、雨樋などに瓦が当たらないように形状を選んでいく必要があります。

桟瓦(さんがわら)

桟瓦は日本の瓦屋根でもっとも多く使用されている瓦となっています。
形状は波の形をしており、波の形以外のものは原則として桟瓦とは呼びません。
一般的に「瓦」というとこの桟瓦を指すことが多くなっており、一般的にも「瓦」というとこの形状の瓦をイメージする人が多くなっています。
桟瓦を設置する際には、野地板の上に固定した「桟木」に瓦をひっかけて施工していくようになっており、それがこの瓦の名前の由来にもなっています。
また瓦が割れてしまったりした場合でも1枚ずつ交換することが可能となっています。
そういった施工のしやすさ、使いやすさ、補修のしやすさも人気の理由となっています。

まとめ

瓦屋根は昔から日本で多く使われており、現在でも数多く利用されている屋根材です。
瓦屋根にはさまざまな種類の瓦があり、それぞれに特徴が違っています。
雨水を防ぐといった実用的な役割や、美観を整えるという役割、魔除け厄除けといった役割もある瓦屋根は日本家屋に必要不可欠な屋根材と言えるでしょう。
Re,ルーフでは一級瓦葺き技能士の資格も取得しており、確実な施工をお約束いたします。
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