瓦屋根のまま屋根の軽量化は可能?乾式工法や桟葺き工法について
2025/03/04
瓦屋根は耐久性や断熱性に優れるため、季節による寒暖差が激しく雨の多い日本の気候風土に適した屋根材です。しかし、瓦屋根は金属屋根やスレート屋根と比べて重いため、地震の多い日本では瓦屋根の重量が耐震性に影響を与えるのではないかと懸念する声も少なくありません。
しかし、近年では瓦屋根のメリットを生かしたまま屋根を軽量化する方法も確立されています。
瓦屋根の軽量化は、単に耐震性を向上させるだけでなく、家屋全体の負担を軽減し建物の寿命を延ばすことにもつながります。さらに、将来的なリフォームの選択肢を広げ、メンテナンスコストを抑える効果も期待できます。
住宅の新築や外装リフォームをお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
瓦屋根の重さは?
瓦屋根は他の屋根材と比較して重いと言われますが、実際にどのくらいの重量があるのでしょうか?
一般的な瓦の場合、1平方メートルあたりの重量は約50〜60kgにもなります。これは、金属屋根やスレート屋根と比べると3〜10倍以上の重さです。
屋根の種類による単位重量の違い
屋根材の種類による1平方メートルあたりの重さの違いを下記にまとめてみました。
屋根材 | 単位重量 (kg/㎡) |
和瓦(湿式工法) | 80 |
和瓦(乾式工法) | 60 |
セメント瓦(乾式工法) | 50 |
スレート屋根 | 20 |
金属屋根(0.35mm) | 5 |
この単位重量差は、屋根全体の総重量に換算するとさらに大きな違いとなります。
例えば一般的な30坪(100㎡)の住宅の場合、瓦屋根の総重量は約5〜8トンにも達することがありますが、金属屋根であれば0.5トン程度に抑えることができ、その重量差は最大で16倍にも達します。
瓦屋根の重量がもたらす影響
建物は重心が高いほど揺れが大きくなる傾向があるため、瓦屋根の重さは地震発生時に建物に大きな影響を与えます。
大きな地震の際には瓦屋根の重さが地震の揺れを増幅させ、建物への負担を大きくしてしまい、最悪の場合は建物の倒壊や損傷を招きます。
また、瓦屋根の重量は建物自体の構造体にも常に負荷をかけ続けています。
柱や梁などの構造材が長年にわたって重い屋根を支え続けることで徐々に変形し、本来必要な強度が発揮できなくなってしまう可能性もあるのです。
このように、瓦屋根にはその重さから生じるデメリットもありますが、他の屋根材を凌ぐ高い耐久性と断熱性は特筆すべき点です。さらに、瓦屋根ならではの高級感あふれる外観には大きな魅力があります。
次章では、これらの瓦屋根のメリットはそのままに、屋根を軽量化する方法について詳しく解説します。
瓦屋根のまま軽量化する方法
瓦屋根の魅力が捨てがたい場合でも、軽量化を実現する方法があります。
ここでは屋根軽量化のメリットと具体的な手法について解説します。
屋根軽量化のメリット
瓦屋根を軽量化することには、主に3つの主要なメリットがあります。
✅耐震性の向上
✅建物への負担軽減
✅リフォームの選択肢拡大
屋根を軽量化すると、建物の重心が低くなり地震時の揺れが軽減されます。その結果、建物の倒壊や損傷のリスクを低減できるのです。
さらに、屋根が軽くなることで、柱や梁といった構造体への負担も減少し、建物の劣化を遅らせて寿命を延ばすことにもつながります。
また、軽量化によって既存の構造体を活かしたリフォームが容易になるというメリットもあります。例えば、大がかりな耐震補強工事をしなくても屋根の葺き替えが可能になるなど、費用や工事期間の面で有利になるケースも考えられます。
湿式工法と乾式工法の違い
瓦屋根の重さは、工法の違いによっても大きく異なります。
ここでは、伝統的な「湿式工法」と、現代の主流である「乾式工法」、そして乾式工法の内の一つである「桟葺き工法」について比較します。
湿式工法(土葺き工法)
屋根の下地の上に葺き土(粘土と砂を混ぜたもの)やモルタルを敷き、その上に瓦を固定する伝統的な工法です。
土やモルタルを使用するため、断熱性や遮音性に優れているというメリットがあります。
しかし、葺き土やモルタルを大量に使用するため屋根全体が非常に重くなり、1平方メートルあたり80kg、場合によってはそれ以上になることもあります。
また、施工には職人の高度な技術が必要で、施工期間も長くなる傾向があります。
乾式工法
屋根の下地の上に防水シート(アスファルトルーフィング)を敷き、その上に瓦を釘などで固定する工法です。
葺き土を使用しないため、湿式工法に比べて大幅に軽量化され、1平方メートルあたり50kg〜50kg程度の重量となります。
施工期間も短縮できるというメリットがありますが、湿式工法に比べると断熱性や遮音性はやや劣ります。
しかし、屋根下地や小屋裏に断熱材を併用することで性能を向上させることも可能です。
桟葺き工法
乾式工法の一種で、瓦を桟木に引っ掛けて固定するシンプルな工法で、瓦の裏側にある突起を屋根下地に打ち付けられた桟木に引っ掛けて固定します。施工が比較的簡単で、メンテナンス性にも優れています。
湿式工法に比べて屋根全体の重量を軽減できるだけでなく、瓦と野地板(屋根の下地板)の間に空間ができるため、通気性が良くなり屋根裏の湿気対策にも効果的です。
瓦の交換や修理が必要になった場合、部分的な交換が容易ですが、強風地域では瓦が風で飛ばされないように、専用の金具で補強するなどの対策が必要になる場合があります。
軽量瓦の使用
瓦屋根の重さを決める要因として、工法の他にも瓦材自体の重量も大きく関わってきます。
近年、従来の瓦の風合いを保ちつつ大幅に軽量化された「軽量瓦」が登場しており、注目を集めています。
軽量瓦は、従来の粘土瓦(陶器瓦)だけでなく、セメントを主原料としたもの、繊維強化セメント、金属(ガルバリウム鋼板など)を基材としたものなど、様々な素材の種類があります。
素材の軽量化だけでなく、耐震・耐風・耐火といった防災性能を強化したものや、断熱性や遮音性などを向上させた製品が多く開発されています。
ケイミュー株式会社:ROOGA(ルーガ)
セメントと特殊繊維を混合した素材で、重量は従来の陶器瓦の半分以下と非常に軽量です。
高い耐久性、耐候性、耐火性を持つだけでなく、色褪せしにくく美しさが長持ちします。
株式会社鶴弥:スーパートライ美軽
陶器瓦の耐久性と高級感はそのままに、高い防災機能と、施工性を高めた軽量の平板瓦です。
独自のロック構造で瓦同士をしっかり固定し、地震や強風から屋根を守ります。
防水性能が高いため緩勾配(3寸まで)にも対応でき、住宅の外観デザインの選択肢が広がります。
三州野安株式会社:セラマウント
粘土瓦でありながら1平方メートルあたり約40kgと軽量化を実現し、瓦同士の接合機構により台風や地震にも強い瓦です。
豊富なカラーバリエーションがあり、洋風住宅にも合うデザインが特徴です。
軽量瓦の注意点
これらの軽量瓦は、従来の瓦と比較して、約1/2〜1/3程度の重量に抑えられています。
各メーカーごとに素材や製法が異なり性能にも違いがありますので、採用を検討する際には専門業者に確認の上、それぞれの特徴を比較検討することが大切です。
また、外観の意匠性も各商品で特徴がありますので、導入前に製品サンプルを確認したり実際の施工事例を見学したりするなどして、外観のイメージを確認することをおすすめします。
瓦屋根の軽量化の際に検討すべき事項
瓦屋根の軽量化を検討する際には、以下の2つの重要なポイントを押さえておきましょう。
屋根の下地補強
屋根の軽量化とあわせて、ぜひ検討したいのが屋根の下地(野地板や垂木など)の補強です。特に、湿式工法から乾式工法へ変更する場合や築年数が古い建物の場合は、下地が劣化している可能性が高いため、専門業者による点検が必須です。
必要に応じて補強を行うことで、屋根全体の耐震性をさらに高めることができます。
専門家への相談
瓦屋根の軽量化は、建物の構造、状態、地域の気候条件など、さまざまな要素を考慮して、最適な方法を選ぶ必要があります。専門的な知識や技術が不可欠ですので、必ず瓦屋根業者や工務店などの専門業者に相談しましょう。
専門業者に相談するメリット
プロの目で正確な診断:自宅の屋根の状態を詳しく調べてもらえます。
最適なプランの提案:状況に合わせた、最適な軽量化方法を提案してもらえます。
納得のいく費用:複数の業者から見積もりを取り、比較検討できます。
安心のアフターフォロー:施工後の保証やメンテナンスについても確認できます。
まとめ
瓦屋根の重さは、耐震性や建物への負担という点で長年課題とされてきましたが、近年の技術の進歩によって、瓦屋根のまま軽量化を実現する方法が確立されてきました。
瓦屋根の軽量化は、地震に強い家づくりを実現するだけでなく、建物の寿命を延ばし、快適な住環境を維持するためにも、非常に有効な手段です。軽量化を実現するための、軽量瓦と乾式工法の組み合わせにはさまざまな選択肢があり、ご自宅の状況や予算に合わせて最適な方法を選定しましょう。
この記事で紹介した情報を参考に、ご自宅の瓦屋根の軽量化を検討してみてはいかがでしょうか。
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