屋根の勾配(傾斜)は重要!雨漏りしやすい角度とその対策とは
2025/06/27
何となく目にする住宅の屋根には、さまざまな勾配があることをご存知でしょうか。実は、屋根の勾配の違いで機能性が変わるため、雨漏りを防ぎやすい角度と雨漏りを防ぎにくい角度があるのです。この記事では、屋根の傾斜の重要さや雨漏りとの関係、勾配の種類とメリット・デメリット、雨漏りを起こしにくくする対策などを詳しく解説します。屋根の勾配について詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
なぜ屋根の勾配が重要なのか
屋根の勾配は、見た目の印象だけでなく機能性に大きく関係しています。屋根の勾配の違いは、屋根の形を大きく変えるため、住宅全体の雰囲気が大きく変化します。屋根の角度が急な急勾配な屋根は、西洋的な印象や伝統的な印象を与え、屋根の角度が緩やかな緩勾配な屋根は、モダンで落ち着いた印象を与えます。機能面では、適切な勾配にすることで屋根に降った雨水の排水を促進させると共に、積雪のある地域では、屋根に積もった雪を滑り落ちやすくすることもできます。屋根の勾配は、屋根材の種類や地域の気象環境、建物の設計意図など、さまざまな条件を考慮して決める必要があります。急すぎる勾配は、施工の難易度を上げ、反対に緩すぎる勾配は、雨水をスムーズに排水できない可能性があります。住宅の建築をハウスメーカーなどに依頼した場合、よほど特徴的な外観や屋上機能を備えた住宅を除き、極端な屋根の傾斜になることはあまりありません。
雨漏りを起こしやすい角度がある?
屋根の勾配は、緩やかであればあるほど雨漏りを起こす可能性が高くなります。降った雨水が屋根に留まる時間が長くなり、軒先に流れにくくなるためです。積雪のある地域も同様に、緩勾配の屋根は雪が留まりやすく雨漏りのリスクが高まります。そのため、緩勾配の屋根は急勾配な屋根に比べて念入りな防水・雨漏り対策が必要になります。豪雪地帯では、雪下ろしの手間を省くために、あえて屋根に雪を留めておけるような形状になった屋根もありますが、緩勾配の屋根と同じく念入りな防水対策が不可欠です。
屋根の勾配を表す表記の違い
屋根の勾配を表す表記には次の3つがあります。
✅寸法勾配(尺貫法勾配)
✅分数勾配
✅角度勾配
寸法勾配(尺貫法勾配)
寸法勾配は、日本の伝統的な測定方法である尺貫法を用いた表し方です。屋根の天辺から水平10寸先の屋根傾斜面との高さを「寸」で表記します。寸の数値が大きいほど角度が大きくなるため傾斜が急になります。寸法勾配は古くから使われている表記方法ですが、現在でも一般的な表記方法として使用されています。
分数勾配
分数勾配は、尺貫法で測った数値を分数によって表す方法です。例えば、屋根天辺から10寸先の勾配面との高さが3寸であれば「3/10」、高さが5寸であれば「5/10」と表記します。
角度勾配
角度勾配は、屋根傾斜を角度によって表記する方法です。屋根天辺から水平を0°とし、屋根勾配との角度を計測します。ちなみに、寸法表記での3寸は角度で表すと16.7°、5寸は26.6°となります。角度勾配表記は、建築測定法に詳しくない一般の方にも分かりやすい表記方法です。
屋根の勾配の種類とそれぞれのメリット・デメリット
屋根の勾配には、大きく分けて次の3種類に分けられます。それぞれの勾配のメリット・デメリットは次の通りです。
✅急勾配
✅並勾配
✅緩勾配
急勾配
屋根に6寸以上の勾配が付いている場合は、急勾配に分類されます。空に向かって高く屋根の三角形が伸びている形状で、伝統的な日本家屋や西洋の古城のような建築物に多くみられる勾配です。
メリット
急勾配は、雨水や雪が勾配によって流れ落ちやすくなるため屋根に留まりにくく、雨漏りを起こすリスクが低くなります。また、広い屋根裏は高い断熱性を発揮できるほか、室内空間として使用すれば、収納スペースや居住スペースとしても利用できます。デザイン面では、一般的な屋根勾配の住宅に比べて特徴的な外観にできるメリットがあります。
デメリット
急勾配のデメリットは、高く突き出た屋根が風の影響を受けやすくなることです。台風や強風が多い地域では、風に煽られたり飛来物が当たるなどして、屋根の一部が破損したり飛んでいったりするケースもあります。また、急勾配屋根の施工には高度な技術を要することや、屋根のメンテナンス時に足場の設置が必須になること、屋根面積が増えるため材料費も増加することなど、施工コストやメンテナンスコストが高くなる傾向にあります。
並勾配
並勾配は、3〜5寸の屋根勾配です。住宅屋根の勾配の中では最も一般的で、多くの住宅屋根に採用されてる勾配でもあります。
メリット
並勾配の最大のメリットは、バランスの良さです。適度な勾配を持つため、雨水の流れやすさと横風に対する抵抗力を両立させています。また、どのような屋根材でも使用できるため、外壁や全体の雰囲気に合わせた柔軟な屋根選びが可能で、デザイン性にも優れます。並勾配では、足場を使用せずに屋根修理やメンテナンスを行えるケースもあるため、急勾配に比べて施工コストやメンテナンスコストを抑えられます。
デメリット
デメリットは、最も一般的な屋根勾配であるため、他の住宅と外観的な特徴の差が付けづらいといったところでしょうか。裏を返せば、近隣住宅に溶け込んだ外観と言えますが、屋根の選択肢が豊富なため外壁を含むカラーやデザインなどを工夫して差別化することもできます。
緩勾配
0.5~2.5寸以下の屋根勾配を緩勾配と言います。屋根が緩やかに傾斜しており、商業施設や現代的なデザインの建物に多い勾配です。
メリット
緩勾配のメリットは、施工が容易で使用する屋根材の量も少なく済むため、施工コストがかかりにくい点があります。また、屋根修理やメンテナンスに関しても、足場を設置せずに済むケースが増えるため、足場台の節約にもなります。さらに、屋根に高さがないため、風の影響を受けにくく台風や強風に強い点もメリットです。沖縄県や九州地方、四国地方などの台風が強い勢力を保ったまま上陸することの多い地域に向いている屋根勾配とも言えます。
デメリット
緩勾配の最大のデメリットは、屋根の勾配によって雨水や雪が流れ落ちにくくなる点です。雨水や雪が屋根に留まる時間が多くなるため、屋根材の劣化が早まることに加え、雨漏りを起こすリスクが高まります。また、屋根裏空間に広いスペースが取れないため、断熱材の設置が制限されたり、収納スペースや居住スペースとして使用することも難しい点があります。デザイン面では、屋根の勾配が緩いため外から目に付きづらく、屋根が建物外観のデザインの一部として有効に働かないといったデメリットもあります。緩勾配は、施工コストや足場代がかかりにくいと言ったメリットがありますが、急勾配や並勾配に比べて雨による屋根の劣化が早く、定期的なメンテナンスを怠ると雨漏りに発展する可能性が高い勾配でもあります。
屋根材ごとに最低限必要な勾配が異なる
各屋根材の最低勾配要件は次の通りです。
屋根材の種類 | 最低勾配要件 |
瓦屋根 | 4寸以上 |
縦葺き金属屋根 | 1寸以上 |
横葺き金属屋根 | 3寸以上 |
スレート屋根 | 3寸以上 |
アスファルトシングル屋根 | 3.5寸以上 |
雨漏りを起こしにくくする対策
雨漏りを起こしにくくする対策は次の通りです。
・屋根のメンテナンスを定期的に行う
・雨漏りを起こしにくい屋根材に交換する
・屋根の勾配を変える
屋根のメンテナンスを定期的に行う
屋根材の劣化が進み防水性能が落ちれば、どのような屋根勾配であっても雨漏りに発展する可能性は十分にあります。大切なのは、屋根材の防水性能を維持しておくことです。そのためには、塗装などによる屋根の定期的なメンテナンスが必要不可欠です。屋根に使用されている屋根材は、種類によって耐用年数やメンテナンス頻度が異なるため、お住まいの住宅屋根にどの屋根材が使用されているのか把握することが大切です。定期メンテナンスが煩わしいと感じる方は、耐用年数の長い屋根材を選ぶことや、塗装メンテナンスに使用する塗料をフッ素塗料などの高耐久のものを選ぶことがおすすめです。
雨漏りを起こしにくい屋根材に交換する
縦葺きの金属屋根が最も雨漏りを起こしにくいとされています。ガルバリウム鋼板などの金属屋根は、屋根材同士の隙間が生まれにくく、耐食性に優れ劣化しにくい特徴があるためです。現在お住まいの住宅屋根が寿命を迎えていたり、雨漏りを起こしているようであれば、葺き替えやカバー工法などで金属屋根への交換をおすすめします。
屋根の勾配を変える
最終手段にはなりますが、屋根の勾配を変えることもできます。方法は2種類あり、1つ目が屋根の上に新しい屋根を追加して二重にすることで勾配を微調整する方法です。2つ目は既存の屋根材や野地板を撤去し、屋根裏である小屋組みを解体して新たな勾配になるように造り直す方法です。この際、室内天井や壁、外壁を解体するような大掛かりな工事になるケースもあり、費用は高額になります。どちらの方法を取るにしても、屋根の構造を変更する工事であるため、それなりに時間と費用がかかります。
まとめ
この記事では、屋根の傾斜の重要さや雨漏りとの関係、勾配の種類とメリット・デメリット、雨漏りを起こしにくくする対策などを詳しく解説しました。屋根の勾配は、屋根の耐久性や雨漏りと密接な関係があります。特に、お住まい地域の気象条件によってはおすすめできない勾配もあるため、ハウスメーカーなどとよく話し合い、環境に合った屋根勾配を選択するようにしましょう。
株式会社Re,ルーフは、京都市右京区を中心に屋根に関する工事や補修などを行う会社です。亀岡市や京都府全域まで対応可能ですので、屋根に関するお悩みやご相談がありましたら、ぜひ株式会社Re,ルーフにご用命ください。ご連絡お待ちしております。
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