人気を集めている「換気棟」について京都の屋根職人が解説
2024/04/26
屋根の修理などをした経験がなければあまり聞いたことがない言葉かもしれませんが、最近「換気棟」が人気となっています。
その名前の通りに「換気」に関係している部材なのですが、どこにあってどういった働きをしているのかということはあまり知られていません。
そこでここでは近年人気を集めている「換気棟」について京都の屋根職人が解説していきたいと思います。
換気棟の概要について
換気棟とは屋根の頂上部分にある棟に設置される換気システムで、屋根裏の熱気を外部に逃がす役割があります。
建物をダメにする原因となるのが「湿気」と言われており、湿気が溜まることでカビや苔が生えたり、雨漏りがする原因にもなります。
最近注目を集めているというのは、昔と比べて気候が変わってきていることが関係しているとされています。
異常気象によって暑い、寒いの幅が大きく極端になっているためです。
Re,ルーフでは屋根修理の際に毎回提案させていただいており、ガルテクト屋根材の断熱と換気棟をセットで設置することによってより湿気を逃がす効果に期待できます。
設置するのには費用はかかりますが、電気やガスを使わずに換気をすることができて建物の寿命を延ばすことができるという点から考えると、コストパフォーマンスの高いものだと言えます。
建物を傷める湿気と結露について
建物を傷める原因となるのが湿気と結露だとされています。
ではこの結露はどのように発生するのでしょうか。
結露の発生について
結露とは家の中でも見かけることがある現象です。
冬に室外が寒い時など、窓ガラスの内側に水滴がついていたり、サッシの下部分に水が溜まっているということがあります。
これが結露です。
こういった結露は建物の外と中で温度差が大きい場合に発生するものです。
室外が寒いと窓ガラス自体が冷たくなっていきます。
その冷たい窓ガラスに湿気が多い空気が内側から当たることによって、湿気に含まれている水分が水滴となってしまうのです。
こうして結露ができたり、湿度が高い状態が続くと壁紙が傷んだり、木材部分が腐食したりする原因にもなっていきます。
昔の家、建物では結露はそれほど発生しなかった
日本の住宅では最近になって結露が大きな問題となってきたのですが、昔の日本住宅では結露はそれほど発生していませんでした。
それは昔の日本住宅では家全体の通気性が良く、常に換気されているような状態であったために室外と室内と温度差があまりなかったのです。
屋根材や外壁の素材の性能の違いもありますし、昔は玄関の扉、雨戸、窓などを開け放していることが多かったこともあって常に風通しが良い状態だったのです。
そのため、夏は暑くなりますし冬は寒くなっていました。
そういった点では過ごしにくい室内だったかもしれませんが、室外と室内の温度差が発生しなかったため結露も発生しなかったのです。
しかし最近では屋根材や外壁の素材性能が進化しており、さらに屋根材や外壁材には断熱材も使われるようになっています。
このことで室内の気密性が高くなり、室内は「夏は涼しく、冬は暖かい」という環境となってきたのです。
また、防犯上の問題や集合住宅が増えているという観点からも扉や窓を解放したままにはできないということが増えていますので、換気が行われることもなくなってきています。
こうして気密性が高くなったことで室内では過ごしやすくなってきたのですが、室外と室内の温度差は非常に大きいものとなってきたのです。
この大きな温度差によって結露が発生しやすくなってきました。
結露が発生すると木材が腐食したりカビが発生することがあります。
カビが建物内に多く発生してくるとシックハウス症候群を引き起こす原因にもなります。
これは近年増加している病気で、建物の気密性が高くなったことが関係していると言えるでしょう。
換気棟は具体的にどのような働きをするのか
では屋根の上で換気棟が具体的にどういった働きをしているのかについて紹介していきます。
換気棟が必要となる状況について
屋根は建物の中でももっとも高い位置にしている部位です。
そのため、夏の昼間、日差しが強い時期や時間帯などには太陽光をすべて受け止めることによって屋根材、屋根の内部は非常に温度が高くなっていきます。
屋根材や屋根裏があまりにも高温になりすぎると木材が乾燥しすぎて耐久性が低下することもあります。
その逆に冬や夜間は屋根は高い位置で外気にさらされているために冷たくなっていきます。
建物の中では暖房などがついていて気密性が高いこともあって高温状態となります。
暖かい空気は上の方へ、冷たい空気は下の方へ集まっていく流れがありますので、室内の暖かい空気は屋根の内部に集まってくることとなります。
この屋根の内部に入ってきた暖かい空気は屋外が寒いことで急激に冷やされて屋根裏に大量の結露を発生させる原因となります。
換気棟が果たす役割と必要性とは
屋根の上部、棟部分に換気棟が設置されていることで屋根の内部に溜まった熱気や湿気を外部に排出することが可能となります。
この換気性能によって湿気が溜まることなく通気性が確保されることで結露の発生を防ぐことが可能となるのです。
ただ、昔からある日本の伝統的な家屋ではもともと通気性、換気性が良いために換気棟をあらためて設置する必要はありません。
昔からある家屋であっても断熱材などを入れ、気密性を高めるような改修工事を行っている場合は通気性が悪くなっている可能性があるため、換気棟が必要となるケースがあります。
また、ごく最近新築で建てられた住宅は初期装備として換気棟が設置されていることが多くなっています。
それらを考えると換気棟の追加工事が必要となるのは、10~50年程度前に建てられた家ということになるでしょう。
昭和50年を過ぎたくらいから屋根や外壁に断熱材、断熱シートを入れることが多くなってきたため建物の気密性が向上したということが関係しています。
建物内の温度が一定に保たれるようになった結果、換気が悪い、通気性の悪い家が増えていったのです。
この年代ごろから建てられた住宅には換気棟の追加工事が必要と言えます。
換気棟を設置やメンテナンスする際に注意するべきこととは
最近増えてきている換気棟の追加工事ですが、新しく設置される換気棟はガルバリウム鋼板やエスジーエル鋼板などの高性能な金属製のものが多くなっています。
これらの金属製の建材は耐久性が優れており、耐用年数も長いものが多いのですが、いつまでも絶対に劣化しないということではありません。
換気棟は屋根の頂上部分に設置されるものなのでここが劣化、破損してしまうとそこから雨漏りにつながってしまいます。
そのため良い状態を維持して安全に使用していくためには換気棟も定期的にメンテナンスをしていく必要があります。
ここでは換気棟のメンテナンスの際に注意するべきことについて紹介していきます。
換気棟がしっかりと固定されているかどうか
棟板金も換気棟は屋根の頂上部分に設置されているために、大雨、雪、台風などの強風、太陽光による高温といったさまざまな影響を受けやすく、それらの影響によって固定している鉄の釘が抜けてしまう、ステンレス製のビスが緩んでしまうということがあります。
こうして棟板金や換気棟の固定している釘やビスにトラブルが発生することによって換気棟や棟板金の固定力が弱くなってしまうのです。
これらの固定力が弱くなると天災などがあった際に棟板金が落下してしまったり、隙間から雨水が侵入してしまうため、こういった固定具によってしっかりと固定されているかどうかが重要なポイントとなります。
定期的に確認することで安全性を確保していきましょう。
コーキング材の劣化がないかどうか
換気棟や棟板金などではそれら部材本体の劣化はもちろんですが、周囲のコーキング材が劣化していないか、剥がれていないかということも重要です。
コーキングが剥がれている、ひび割れしている、劣化しているという状態だとそこから雨水が内部に侵入していくこととなります。
こうしたコーキング材は換気棟本体、棟板金本体よりも耐用年数が短くなっているため、より定期的にメンテナンスを行うことが重要です。
まとめ
日本は気候が温暖ではあるのですが、基本的に湿度が高く、じめじめした時期が続くことがあります。
さらに最近の住宅は断熱材などの性能が進歩したことによって気密性が高くなっています。
気密性が高くなったことで建物内は過ごしやすくなったのですが、その分屋外との温度差が大きくなり、結露が発生しやすくなっています。
結露が発生するのを防ぐためには通気性を良くすることが重要となるのですが、それに役立つのが換気棟です。
室内で結露が発生することが多いと感じる場合はぜひ換気棟の設置を考えてみましょう。
『Re,ルーフ』ではお客様のご要望に寄り添い、職人目線からアドバイスにて理想の屋根になりますようお手伝いをさせていただきます。
〈換気棟の施工例〉