カバー工法に向いていない屋根とは?知らないと損するチェックポイント
2025/05/26
ご自宅の屋根のメンテナンス時期が近づき、リフォーム方法や費用について気になる方も多いと思います。屋根のリフォーム方法にはいくつか種類がありますが、近年注目されているのが「カバー工法(重ね葺き)」です。
既存の屋根材を撤去せずに、その上から新しい屋根材を被せるこの方法は、費用や工期を抑えられる可能性があるため魅力的です。しかし、どんな屋根にもカバー工法が適用できるわけではありません。自宅の屋根がカバー工法に向いていない状態で無理に施工すると、後々大きなトラブルに繋がる可能性もあります。
この記事では、屋根のカバー工法の具体的な工事内容、メリット・デメリット、そしてカバー工法が採用できないケースについて詳しく解説します。
屋根のリフォームを検討中の方は、ぜひ最後までご覧いただき、後悔しないリフォーム計画の参考にしてください。
屋根カバー工法とは?メリット・デメリットを解説
まずは屋根カバー工法の具体的な施工方法と、カバー工法を採用するメリットとデメリットについて解説します。
屋根カバー工法の具体的な方法
屋根カバー工法とは、その名の通り、既存の屋根材の上に新しい屋根材を「カバー」するように重ねて施工する方法です。「重ね葺き(かさねぶき)」とも呼ばれます。
具体的な手順としては、まず既存の屋根材の上から「防水シート(ルーフィング)」を敷設します。この防水シートは、万が一新しい屋根材の隙間から雨水が浸入しても、建物内部への雨漏りを防ぐために重要な役割を果たします。
その後、新しい軽量な屋根材を葺いていきます。棟板金などの役物も新しく取り付け、工事完了となります。
屋根カバー工法のメリット
カバー工法が選ばれる主な理由として、以下のメリットが挙げられます。
費用の削減
既存屋根材の撤去費用や処分費用が発生しないため産業廃棄物の発生を最小限に抑えられ、葺き替え工事に比べてコストを抑えられます。特に、既存の屋根材がアスベスト(石綿)を含有する場合には撤去・処分費用が高額になるため、カバー工法は大きなメリットとなります。
工期の短縮
撤去作業がない分、工事期間も短縮できます。天候にもよりますが、一般的な戸建て住宅であれば数日〜1週間程度で完了することが多く、住みながらの工事も可能です。
断熱性・遮音性の向上
屋根が二重構造になることで、断熱性や遮音性が向上する効果が期待できます。特に金属屋根材の下に断熱材が一体となった製品を使用すると、より高い効果が見込めます。
屋根カバー工法のデメリット
一方で、カバー工法には以下のようなデメリットも存在します。
屋根の重量増加
既存の屋根に新しい屋根材を重ねるため、屋根全体の重量が増加します。そのため、建物の構造や耐震性によっては採用できない場合があります。
下地の状態確認が限定的
既存屋根を撤去しないため、屋根下地(野地板など)の劣化状態を直接詳細に確認することが難しくなります。もし下地が著しく傷んでいる場合は、カバー工法ではなく葺き替えが必要となります。また、雨漏りが発生している住宅では、原因が下地や防水シートの広範囲な劣化であった場合は、カバー工法では根本的な解決にならないことがあります。
将来的なリフォーム費用の増加
次回のリフォーム時には、二重になった屋根材を両方撤去する必要が出てくるため、その際の費用が高くなる可能性があります。
カバー工法が適する屋根材・適さない屋根材
カバー工法はすべてのケースで採用できる訳ではありません。ここでは、カバー工法に適する屋根について説明します。
カバー工法が可能な既存屋根材
カバー工法は、比較的軽量で平坦な屋根材に適しています。具体的には以下のような屋根材です。
✅スレート屋根(カラーベスト、コロニアルなど)
✅金属屋根(トタン、ガルバリウム鋼板など)
✅アスファルトシングル
これらの屋根材であれば、現在の状態が極端に悪くなければ、カバー工法の対象となる可能性が高いでしょう。
上に重ねる新しい屋根材の種類
カバー工法で使用する新しい屋根材は、軽量であることが非常に重要です。主に以下の屋根材が用いられます。
✅スレート屋根(カラーベスト、コロニアルなど)
✅ガルバリウム鋼板
✅SGL鋼板
✅断熱サンドイッチ屋根材
✅アスファルトシングル
広く普及しているスレート屋根の場合は、その上に同様のスレート屋根材を施工することが可能です。
ガルバリウム鋼板は耐久性と耐食性に優れ、非常に軽量であるため現在のカバー工法で最も主流な屋根材です。さらに耐久性を高めたい場合には、ガルバリウム鋼板にマグネシウムを添加した次世代の金属屋根材「SGL鋼板」もおすすめです。
断熱・遮音性能を高める方法として、金属パネルに断熱材を挟み込んだ「断熱サンドイッチパネル」もおすすめです。ただし、取り扱いメーカーがまだ少なく、コストが掛かるのが難点です。
アスファルトシングルは軽量で柔軟性があり、複雑な形状の屋根にも対応しやすい素材で、洋風のデザインによく合います。
屋根カバー工法が採用できないケースとは?
費用や工期面でメリットの多いカバー工法ですが、残念ながら全ての屋根に適しているわけではありません。
以下に該当する場合は、カバー工法を採用できない、あるいは採用すべきでない可能性が高いため、必ず専門業者による正確な診断が必要です。
既存の屋根材が瓦屋根の場合
瓦屋根はカバー工法には不向きです。
瓦自体が重いため、重ね葺きすると建物への負荷が過大になり、耐震性に影響を及ぼす可能性があります。また、瓦屋根は凹凸があり平坦でないため、新しい屋根材や防水シートを安定して固定することが難しく、施工不良や雨漏りのリスクが高まります。
したがって、瓦屋根の場合は既存の瓦を撤去し、新しい屋根材に葺き替える工事が一般的です。
屋根の下地の劣化が著しい場合
屋根の下地(野地板や垂木など)が腐食したり、強度が著しく低下している場合は、カバー工法はできません。
屋根を歩くとフワフワする、天井裏から見て広範囲なカビや腐食が見られる場合は注意が必要です。下地の状態が悪いと、新しい屋根材をしっかり固定できず、強風で飛ばされたり雨漏りが再発する恐れがあります。
このような場合は、既存の屋根材と下地を全て撤去し、新しい下地を作ってから屋根を葺き替える必要があります。
すでにカバー工法をしている屋根
過去にカバー工法でリフォームされた屋根への二重カバーは、屋根の重量増加により建物への負荷が大きくなり、耐震性を損なう可能性があるため推奨されません。また、施工が難しく防水処理も困難になることがあります。
既にカバー工法済みの屋根をリフォームする場合は、既存の二重の屋根材を全て撤去し、新たに葺き替えるのが一般的です。
雨漏りが広範囲に、または長期間進行している場合
雨漏りがあるからといって、安易にカバー工法で屋根を覆うのは危険です。雨漏りの原因が下地の腐食や防水シートの広範囲な破損である場合、表面だけを覆っても内部の劣化は進行し、建物が傷む可能性があります。
軽微な雨漏りであればカバー工法も選択肢に入りますが、広範囲または長期間放置された雨漏りの場合は、屋根材を剥がして原因を特定し、下地から補修する葺き替え工事が適切です。
建物の耐震性に懸念がある場合
1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた建物や、構造計算上屋根の重量増加が許容できない建物の場合、カバー工法は避けるべきです。
屋根の重量が増加すると、耐震性が低い建物では地震時の倒壊リスクが高まります。耐震診断を受け、建物の状態を把握した上で最適なリフォーム方法を選択し、場合によっては軽量な屋根材への葺き替えも検討しましょう。
屋根カバー工法の費用相場と工事期間
屋根カバー工法について、気になる費用の相場と工事期間の目安について解説します。
費用相場
屋根カバー工法の費用は、屋根の面積と新しい屋根材の種類、既存屋根の状態、足場設置の必要性などによって大きく変動しますが、一般的な30坪程度の戸建て住宅の場合、80万円~150万円程度が目安となります。
葺き替え工事の場合は、これに加えて既存屋根の解体・撤去費用、廃材処分費用などがかかるため、一般的にカバー工法よりも数十万円程度高くなる傾向があります。ただし、アスベスト含有屋根材の葺き替えの場合は、処分費用がさらに高額になるため、費用差はより大きくなります。
正確な費用を知るためには、必ず専門業者に現地調査を依頼し、詳細な見積もりを取ることが重要です。
工事期間
カバー工法の工事期間は、天候にも左右されますが、一般的に3日〜1週間程度です。葺き替え工事の場合は、解体作業が加わるため、1週間〜2週間程度かかることが多くなります。工事期間が短いということは、その間の生活への影響も少なく、近隣への配慮という点でもメリットと言えるでしょう。
まとめ
屋根のカバー工法は費用や工期を抑えられるという多くのメリットがありますが、屋根の状態や種類によっては採用できない場合があります。下地の劣化が著しい屋根、既にカバー工法済みの屋根、雨漏りが進行している屋根、耐震性に懸念がある建物などはカバー工法が不適切な可能性が高いため、専門業者による詳細な診断が不可欠です。
京都市右京区を拠点とする屋根工事職人直営店「Re,ルーフ」では、お客様のお住まいの状況を第一に考え、無理な工事をおすすめすることは一切ございません。経験豊富な屋根のプロが、お客様の大切なお住まいにとって最適なリフォームプランをご提案いたします。
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