地震や台風に強い瓦が存在する?「防災瓦」とはどんな瓦?

地震や台風に強い瓦が存在する?「防災瓦」とはどんな瓦?

2025/03/04

屋根の軽量化は、耐震性の向上や建物への負担軽減に非常に有効です。

前回の記事では瓦屋根を軽量化するメリットについて解説し、その方法として乾式工法を採用し軽量瓦を使用する手法などをご紹介しました。今回は、軽量瓦の一種である「防災瓦」について、その特徴とメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。

防災瓦は、従来の瓦が持つ美しさや耐久性を維持しつつ、耐震性・耐風性・耐久性などを大幅に向上させた瓦です。防災瓦に関する正しい知識を身につけることで、地震や台風などの自然災害に強い、安全・安心な家づくりに役立てていただければ幸いです。

防災瓦とは?

従来の瓦は、その重さや固定方法が難点となり、大規模な地震や強風によってズレや落下が生じて家屋への被害を拡大させる可能性がありました。
防災瓦は、これらの課題を克服し、より安全・安心な住まいを実現するために開発されまたものです。防災瓦には明確な規格や基準は存在しませんが、一般的に地震・台風・豪雨といった自然災害から建物を守るための様々な工夫が施された瓦を指します。

防災瓦と従来の瓦の主な違いを、【形状】【素材】【施工方法】の3つに分けて解説します。

【形状】瓦同士の結合力を高める工夫

防災瓦は、瓦同士の噛み合わせや連結を強化することでズレや落下を防ぐ構造になっています。

具体的には、瓦同士の重なり部分のかみ合わせを深くする「ロック構造」や「アンダーロック」と呼ばれる瓦同士を強固に連結する仕組みを採用することで瓦がずれにくくなり、一体の屋根面としての強度が生まれます。

また、瓦の裏面や側面に設けられた突起や溝によって瓦同士の摩擦力を高め、ズレや飛散を効果的に抑制します。

【素材】軽量化と強度向上を両立

防災瓦は、素材の改良によって、軽量化と強度向上を同時に実現しています。
従来の粘土瓦に比べて軽量な素材(セメントや特殊繊維などを混ぜ合わせた素材など)を使用し、屋根全体の重量を軽減します。その結果、建物構造への負担を減らし耐震性を向上させます。

また、瓦表面の釉薬(ゆうやく:瓦表面のガラス質のコーティング)の改良や、焼成方法の工夫により、瓦自体の強度を飛躍的に高めています。これにより、割れにくくひび割れにも強い瓦が実現します。

【施工方法】強固な固定で災害に強い屋根を構築

防災瓦は、施工方法においても従来の瓦とは異なる工夫が施されています。
伝統的な瓦は土やモルタルで固定する湿式工法が一般的でしたが、防災瓦では桟木に瓦を引っ掛ける乾式工法を採用しています。

さらに、専用の釘やビスで瓦を一枚一枚しっかりと桟木に固定する「全数釘打ち」工法が採用されることが多くなっています。この工法により、地震や強風による瓦のズレや落下を大幅に抑制します。

また、商品によっては瓦同士を専用金具で連結し、屋根全体の一体感をさらに高め、より強固な屋根構造を実現しています。

▷瓦屋根のまま屋根の軽量化は可能?乾式工法や桟葺き工法について

防災瓦のメリット・デメリット

防災瓦は、災害から住まいを守るための有効な選択肢ですが、導入にあたってはメリットだけでなくデメリットも理解しておくことが重要です。
ここでは、防災瓦のメリットとデメリットを詳しく解説します。

防災瓦のメリット

ズレや落下の防止

防災瓦は瓦同士の噛み合わせが深く、さらに釘やビスでしっかりと固定されるため、地震の揺れによる瓦のズレや落下を大幅に軽減します。これにより、瓦の落下による直接的な被害だけでなく、屋根の損傷による雨漏りなどの二次被害も防ぎます。

建物への負担軽減

軽量化された防災瓦を使用することで、建物全体の重心が低くなり、地震の揺れを軽減する効果も期待できます。これは、建物全体の耐震性能向上に繋がり、より安全にお住いいただけます。

耐風性の向上

防災瓦は瓦同士の連結を強化する施工方法や専用の金具を使用することで、強風にも耐えうる強固な屋根構造を実現します。
強風による瓦の飛散を防ぎ、飛散した瓦が人や物に当たるといった二次被害を防止します。台風の多い地域や、風当たりの強い立地でも、安心して暮らすことができるでしょう。

耐久性の向上

素材や製造方法の改良により、防災瓦は従来の瓦よりも耐久性が高く長持ちします。これにより、瓦の交換や補修といったメンテナンスの頻度を減らし、長期的なコストを削減できます。

防災瓦のデメリット

防災瓦には多くのメリットがありますが、導入前に検討しておくべきデメリットも存在することに注意しましょう。

コストアップの懸念

防災瓦は、特殊な素材や製造技術を使用しているため、従来の瓦に比べて製品価格が高くなる傾向があります。
釘やビスによる固定や専用金具の使用など手間がかかるため、施工費用も高くなる場合があります。ただし、長期的に見れば高い耐久性からメンテナンスコストを削減でき、トータルでの出費を抑えることが期待できます。

デザインの制約

防災瓦は種類が限られるため、一般の瓦に比べて色や形状のデザインバリエーションが少ない場合があります。
メーカーによってデザインのラインナップが異なりますので、複数の製品を比較検討することをおすすめします。
近年は伝統的な和瓦の形状だけでなく洋風建築に合うモダンなデザインの防災瓦も登場しており、建物のスタイルに合わせて選ぶことができます。

防災瓦の種類と選び方

さまざまなメーカーから防災瓦が販売されていますが、その中でも知名度の高いものをいくつかご紹介します。

おすすめの防災瓦

株式会社鶴弥:スーパートライ110シリーズ

国内最大の瓦産地である愛知県の三州地方を代表する瓦メーカー鶴弥の防災瓦です。
ラインナップが豊富で、お好みの外観デザインに合わせて選定することが可能です。

参照:鶴弥HP

マルスギ株式会社:和形防災瓦

通常の和形と同じ美しさを保ちながら、高い防災性を備えた防災瓦です。
雨の浸入や強風による浮き上がりや地震の揺れに高い抵抗力を発揮する自然災害に強い瓦で、和風住宅に最適です。

参照:マルスギHP

株式会社シバオ:ウルトラセーフティ・スリム

従来の瓦に比べて20%もの軽量化を実現した防災瓦です。裏面帯状施釉という特許技術により、軽さと強度を両立させています。

参照:シバオHP

防災瓦の選び方

防災瓦は、建物の安全を守るために重要な役割を果たします。しかし、どんな瓦でも良いわけではありません。
お住まいの地域や建物の構造によって、最適な防災瓦は異なります。例えば、台風が多い地域では風に強い瓦を選ぶ必要がありますし、地震が多い地域では揺れに強い瓦を選ぶ必要があります。

防災瓦を選ぶ際には、瓦工事店や工務店などの専門業者に相談するのが最も確実です。
専門業者はご自宅の状況を詳しく調査し、以下の点を考慮して最適な防災瓦を提案してくれるでしょう。

✅地域の気象条件
✅建物の構造
✅予算
✅デザイン

防災瓦の施工とメンテナンス

防災瓦を選んだとしても、実際の施工やその後のメンテナンスができていないと効果は半減してしまいます。
ここでは防災瓦の施工とメンテナンスのポイントを分かりやすくご紹介します。

信頼できる専門工事店に依頼

防災瓦の性能を最大限に引き出すためには、メーカーが指定する施工方法を遵守する必要があります。誤った施工は、防災性能の低下を招くだけでなく、保証の対象外となる可能性もあります。
防災瓦の施工経験が豊富で、専門知識を持った信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。業者選びの際は、施工実績や資格の有無などを確認しましょう。

日常点検で瓦の状態をチェック

✅年に1〜2回、以下のポイントを目安に点検を行いましょう。
✅瓦にひび割れ、ズレ、破損がないか目視で確認しましょう。
✅屋根の頂上部分(棟)がズレていないか、双眼鏡などを使って確認しましょう。
✅雨樋に詰まりや破損がないか確認しましょう。
✅台風や地震の後は、特に念入りに点検を行いましょう。

ひび割れや破損を見つけたら放置せずに、早めに専門工事に相談し補修または交換することをおすすめします。小さな損傷でも、放っておくと雨漏りの原因になることがあるためです。

専門家による定期的な点検も重要

、数年に一度は専門業者に点検を依頼することをおすすめします。プロの目線でチェックすることで、自分では見つけにくい瓦のズレやひび割れ、漆喰の劣化などを早期に発見できます。

防災瓦は、正しく施工し、適切なメンテナンスを行うことで、その効果を最大限に発揮することができます。
日頃の点検を心がけ、何かあれば早めに専門業者に相談しましょう。定期的なメンテナンスを行うことで、瓦屋根を長く、そして安全に保つことができます。

まとめ

防災瓦は従来の瓦に比べて、耐震性・耐風性・耐久性などが大幅に向上しており、より安心安全な暮らしを実現できます。
防災瓦を選ぶ際には、住んでいる地域の気候条件や建物の構造、予算などを考慮し、専門業者に相談しながら最適な製品を選ぶことが大切です。また、防災瓦の性能を最大限に引き出し長く維持するためには、適切な施工と定期的なメンテナンスが不可欠です。

防災瓦は、初期費用は高くなる傾向がありますが、長い目で見れば建物の寿命を延ばしメンテナンスコストを削減することにもつながります。防災瓦の導入を検討し、災害に強い家づくりを目指しましょう!

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